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「あなたの中に広がっているのは安息ですか?それとも底知れぬ絶望なのでしょうか?」
おぼつかない手でそれを手繰り寄せ、それを自分の首にあてがい滑り込ませると、その刃は細いヒモを挟み込んだ。
間髪入れずに力を入れる。
だがヒモは異常なまでに硬く、ハサミの刃が通らない。
どうして!?
そんなはずないのに!
「あぁ、そうでした。僕の問いには答えられる訳もありませんでしたね。冥土の土産にあなたに良い事を教えてあげましょう」
「……」
「ピアノ線はハサミでは切れませんよ」
「……」
絶望が脳内を埋め尽くすと共に、意識がゆっくりとホワイトアウトしていく。
それは紛れもなく死の感覚だった。
ごめんね……お兄ちゃん……
ごめんね……
ごめんね……
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