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そろそろ限界が近付いているようだ。
バクがもしいるなら、水無瀬が事切れる前にそいつが死ぬ可能性もあったが、やはりそううまくはいかない。
そもそもバクはいるのか、バクが死んだからといってこの悪夢が終わる保証もない。
既に死んでいる七人の中にバクがいた可能性もある。
「……こ……殺し……て……。お願い……」
涙混じりに切れ切れな声で訴えてくる水無瀬。
水無瀬にとっては死こそが最大の幸福。
それはもちろん俺も理解しているが、それを拒否する。
「……」
苦しんでいる人間を目の前にして、俺にはその人間が求めている事をする手段が握られている。
それは心苦しい事ではあったが、俺はそれを実行する気はなかった。
携帯を取り出し残り時間を確認する。
この一時間が終わるまで残り四分程。
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