序章 カンキン

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こんな前も後ろもわからないような状況に置かれて、心細くない人間がどの世界にいようか。 誰かが今、同じ場所にいる。 こんな時は誰だってそこへ向かうのが自然の流れ。 それは俺も例外ではなく、思考を巡らすよりも先にその足は音の方向へと走り出していた。 音の遠さ的に考えればさっきの音はこの階からではないだろう。 そもそもここが何階なのか、何棟なのかすらもあやふやであり、それを知る為にも、俺はまず階段へと急いだ。 階段へと差し掛かった瞬間、近くで足音が立ったのが聞こえた。 あくまでそこは暗闇の中なので、あまり周囲がどんな状況なのかを把握する事が出来ない。 この時も足音はすぐ近く、数歩程の近距離で鳴り響いたが、暗闇のせいで反応が一瞬遅れる。 「うわっぷ!」 「んん!?」 謎な声と共に俺の胸の中に背の小さい誰かが飛び込んできた。
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