這いよる違和感

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家の中でさえうるさいのに、外に出てみるとそれは余計にうるさい。 陽一「うるさい」 彼もそう思うらしい。 稜紀「だな…。おはよう」 真正面の門前で待っていた彼も同感だった。 陽一「また事件でかぁ?朝からご苦労なこった」 ふぅ、と深い溜息を吐き出しワザとらしく手を挙げジェスチャーする。 しかし陽一を端目に、稜紀は沈黙する。 昨日のあれが原因とすれば、彼は犯人を見てしまっていることになる。 口外してもよいのだろうか? 相談すれば真面目に聞いてくれるであろう仲間たちを巻き込んでしまう可能性。 または、真面目に聞いてくれなくとも、なまじ犯人像を知っていることで、襲われてしまうという可能性。 二つが脳裏をよぎる。 言ってしまっていいのだろうか? 自分が巻き込んでしまっていいのだろうか? そんな葛藤が彼を襲う。 陽一「お、おい?稜紀さん、どうしました?」 不意に黙りこくってしまい、心配し声をかけた。 その声で我に返る。 稜紀「えっ…?あ、あぁすまない。いや、なんでもないんだ」 下手に喋ってしまうとどうなるかわからない。 彼はその選択肢を選んだ。 陽一「それならいいんだけどよ。んじゃ、学校行きますか」 そうだな、と言いつつ門を出る。 学校へ続く道、もとい通学路は家から右方向である。 一方左は喧騒と、パトランプの放光で賑やかである。 陽一「しっかしまぁ、何と言うか。物騒な世の中だよなぁ」 呆れ顔でモノを言う。 しかし同情しかない感情が湧く。 稜紀「そうだな。まったく、困ったもんだ」 そんなことを言いながら、二人で通学路を通って学校へ向かう。 今日も天気は良い方だ。
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