這いよる違和感

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彼女を一言で表すと、端正といったところか。 そう、整っているのだ。 今、見えている横顔は綺麗で非の打ち所がない。 無論正面から見ても、である。 本を読むにしたってその姿勢はまっすぐで、猫背だったり、足を机の下から出したりとかはない。 髪の毛は全て肩辺りで切りそろえられ、前は髪は目にかかっているところがない程。 制服の着こなしも、着崩しているところなどは見たことがない。 それほど。 それほど、彼女は整っているのだ。 と、不意に彼女が本から目を反らしこちらを見てきた。 その眼光は何かを見透かしたような、澄んだ目だった。 それと同時にチャイムが鳴る。 いつもと変わらないチャイムだ。 話題に夢中だった生徒たちも、残念そうに個々の席に戻る。 暫くして担任が、教室のドアを開けた。 「えぇ、おはよう。委員長あいさつをお願い」 教壇に立った、20代後半の女性教員の声がクラスに響く。 「きりーつ、礼」 委員長の号令で、クラスの生徒たちがその命令に従い朝の挨拶を交わした。 「それではさっそくだが…。もう、みんなも知っていると思う最近の事件の話だ」 教壇に手を着き雰囲気を醸し出す。 話はやはり、同じ。 内容としては、夜十八時三十分以降学校に残っていてはいけない。 部活動なども夕方に練習してはいけない。 以下もろもろ。 「みんなも気を付けてくれ。それでは終わり」 担任が教室から部屋を出ると、生徒たちが一斉に騒ぎ出す。 「えぇー、夜遊べないじゃん」 「部活動休みって…マジかよ…」 「やっぱりこえぇよなぁー…」 などなど、どうやら不満の声が多いようだった。 陽一「よう。まっさか、学校側もこんな感じになっちまうとはなぁ」 溜息をもらしながら言い放つ。 稜紀「しょうがない。事がことだしな。割り切らないと」 そう、割り切るのも大切だと思う。 何事もそうやって、見る余裕を作っていくのが稜紀のスタイルである。
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