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遠い世界の自分を見ているようだった。
ようだった、と言うのは起き抜けで記憶が曖昧だから。
その世界の自分は神様の一部だった。
悪を糺し、正義を語る。
人間が好き。
しかし、それもつかの間。
悪というのは、人間が作り出すもの。
それを好いている自分はいったい何なのかわからなくなってしまった。
と、稜紀は携帯のアラームで目が覚めベッドの上で上半身だけを起こしボッーとしている。
稜紀(変な夢だった。あの夢じゃなかったな)
カーテンを開けると気持ちのいい陽の光が部屋を照らす。
今日も快晴だ。
近くの公園で咲いている桜の木は、もう少し咲いていそうだった。
今日も学校があるので、一階へと足を運び朝食を食べる。
テレビをつけてみると、朝の情報番組が流れた。
朝食を食べながら見ていると、例の事件のニュースが流れる。
キャスターが淡々と冷静に読む。
「最近連続で起きている殺人事件の情報です。昨晩の被害者はいないとのことです。警察も事件の真相、犯人の捜索を続けており…」
どうやら昨日は誰も死なずに済んだらしい。
だけど、どうだろうか。
稜紀の不安、いわゆる嫌な予感は拭えない。
杞憂であればいいが、と心底思う稜紀は食パンが乗っていた皿とコップをシンクに突っ込み学校の準備を始めた。
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