ある夜のこと

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陽一がいないため、三人で教室へと歩を進める。 階段を上がり自分たちのクラスを目指す。 ガララッ、と後ろのドアから教室に入った。 いつもの風景が目の前に広がる。 ももかと楓は、他の女子たちところへ挨拶をしに行ってしまった。 稜紀は先に自分の席へと座り、教科書などを机の中に突っ込む。 学校へ登校して一息つくと、後ろから声がした。 「おっす。今日は相棒がいねぇのな」 振り返ってみると、そこには体格のいい男が立っていた。 稜紀「おはよう。今日もごっついな」 スポーツ刈りで、しかも身長はおよそ180後半の見るからに体躯がいい。 彼の名前は、溝淵 晶(みぞぶち あきら) 柔道の部員である。 見た目は説明した通り筋肉マンばりのガタイ。 の割には、爽やか系というナイスマッチである。 噂によると、女子からも支持率が高く性格もいい奴なのだ。 晶「んで、陽一はどうした?」 隣の空席を強引に自分の足元に引っ張り、背もたれを前にして座った。 稜紀「わからん。もしかしたら、遅刻かもしれないし風邪かもしれない」 晶もギョッと、した顔になった。 晶「明日は雪だな」 そういうと、窓の外を見る。 遠い目だった。 つられて稜紀も窓辺を見てみる。 稜紀(ん?有栖川も来てないのか…) 窓辺に席を構えている、有栖川も来ていなかった。 担任が来るまでに教室に入室していないと遅刻扱いされてしまう。 しかし、彼女のことだろう。 今日はたぶん来ない、いや絶対に来ないだろう。 晶「しっかし、最近物騒な世の中だな。なーにが殺人だよまったく」 呆れた感じの声色で話す。 稜紀「あぁ、晶は柔道部だから午後の練習できないんだっけ」 午後の授業が終わり次第、生徒たちは即刻帰らなければならない。 晶「俺らだけじゃねぇよ。野球だって、サッカーだって、何なら文化部のやつらもだぜ。大会近いのによ」 晶のイライラは隠せなかった。 確かに、大会が近いのに練習できないとなると正直辛いだろう。 他校は、ともかく他県からくる相手に差ができてしまう。 彼の気持ちは焦っていた。 なんとかして事件が終わってほしいと心底思う稜紀だった。
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