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まさか駅の中で道に迷うとは…思いっきり田舎者だな。俺。
「おい、いつまでクスクスしてるんだ」
「だってまさかとは思ってたけど久保君、本当に駅の中で迷っちゃうなんて。それが可笑しくって、クスクス…」
なにが可笑しいんだ。そりゃあ、田舎者がいきなり都会にきて、一人で歩き回るとか絶対に迷うよ。
それにしてもコイツよく店の名前言っただけで居場所がわかったものだ。
「姫川原ってよくここの駅に来るのか?」
こいつも1人暮らしだし、ここに来るのは初めてじゃないのかと思った。
「私ね、天治(てんじ)市出身なの。ここから電車で2時間くらいのところにある市だよ。中学や高校のときはだいたいここの駅周辺に来てたからわかるんだよ~」
「天治市!?天治市でも十分な都会なのにわざわざこっちに来るなんて」
天治市は海に面していて、軍港があることで有名な都市だ。日本でも9番目くらいに栄えている。有名なだけあって観光客も多い。
「こっちに来たのは医療大学に入りたかったからだよ。久保君もそうでしょ?」
「まぁ、そうだけど…」
「そういえば、久保君て地元どこなのー?」
───!
ついに質問されてしまった。
いくら7カ月前のことでもさすがに知っているだろう。テレビはもちろん、全国新聞にも第1面にそのできごとが載っていたんだから。
『蔵那賀(くらなか)村、壊滅状態』
全国の新聞、テレビ、ラジオもこのセリフだった。
どうやって返答しようか、脳をフル回転させる。
「ここから北北西のところにある村だよ」
なんか無茶苦茶な答えだが、こいつなら納得してくれるだろう。
と、思ったが
「久保君、しほと同じこと言ってる」
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