:迫り来る影

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「アザラシかなあ?」 「アザラシではないと思う。白いアザラシと言えばヒョウアザラシだけど、ヒョウアザラシは南氷洋辺りしか生息していないから日本側で見つかる筈がない」  片原は姿勢を戻し、肘をつき考え直す。 「じゃあ何だろうな」  中川も考える。 「人の形を成して白い生物……」 「もしかしてシロイルカ?」  中川は偉く閃いた様な顔をした。 「シロイルカは逆に北氷洋に生息しているからいる筈がない。それに四、五メートルもあるんだぞ。人間と間違えるわけがない」  正論を突き付けられた中川は、全くその通りだといった様に肩を落とす。  すると瑠巳は驚く様に目を見開く。だが、まさかなと言って軽く流す。 「なんだよまさかって」  中川の問いに片原も便乗する。 「まあ、俺の憶測だけど結論は未知の生物。何でかと言うと人の大きさになる海洋生物はお前らが挙げたアザラシやイルカ以外に鮫、魚、アシカ……だが、日本付近に分布し、白くて群れを成すのはこの中にいない。つまり未知の生物としか言いようがない」  ーー中川が失笑する。手をヒラヒラさせながら、ありえん、ありえんと声でも笑う。瑠巳も、だよなと言い笑いだす。その後、やっと片原も笑いだした。  そんなこんなで、一時間目は白い魚人の話をしているだけで費やしてしまった。
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