8人が本棚に入れています
本棚に追加
抜け出した後、瑠巳は足早に屋上へ向かった。危険な梯子を慎重に登る。何だか風が強い。弁当箱が揺れる。
登りきり座り込む。一呼吸して大の字に寝そべった。
胸ポケットから携帯電話を取り出す。GYAHOO!を開き、暇潰しに占いでもしようとした。だがある記事が目に飛び込む。
「んっ? 白い魚人襲撃!」
GYAHOO!のトップページのニュースの見出しに載る記事は余程のものである。
「白い魚人って今朝の記事じゃあ……」
『白い魚人襲撃』の記事を思わずクリックした。
『速報! 今朝記載した白い魚人が正午のサイレンと共に海岸に現れた模様。既に自衛隊が対処に応じているが防戦一方。近隣の住民は避難に手惑い、遅れているとのこと。白い魚人は既に海岸を越え、内陸地を侵攻している。皆さんの迅速な避難を願います』
「白い魚人か……」
白い魚人が自分の言っていたまさかのこと、未知の生物だったとはーー
瑠巳は携帯から目が離せなかった。
我にかえったのは市内に警戒のサイレンが鳴り響いてからだった。避難要請の放送も流れ始めた。
しかし、いつもと違う。事態の荒立たしさ、避難要請の手遅れ、サイレンの音ーー。
考えを巡らす。現状の怪訝さを。脳が反応し始める。そしてハッ! と気づく。
「もう始まっているんだ。避難じゃない……。逃避だ」
普通は警報が始まりの予兆である。予兆があれば避けることが出来る。
だが、今は違う。警報は予兆ではなく災害の始まるゴングになっていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!