:迫り来る影

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 予兆があればこのような事態にはなっていないんだーー。  瑠巳は弁当箱を口に加え階段を降りる。このような事態だからこそ慎重に降りた。  校内は人気を失っていた。四階、三階、二階へと降りていき体育館の渡り廊下へ向かった。僅かに人が残っていて、その後ろに瑠巳も続いた。(地下には避難場が設置してある)  平日、生徒は学校の管轄内にいるため学校の並びに従って並ぶ。 「瑠巳遅えよ。心配したぞ」 「わりい、これなら先生に怒られたほうがましだったな。ハハハ……」  不安のうかがえる中川と片原。それに対し瑠巳は和らげる様に微笑していた。 「はい、バレーボール。僕達も一番大切な物を持ってきたから本郷ちゃんにも」  片原からバレーボールを渡される。中川は竹刀、片原は弓と矢を数本持ってきていた。 「別によかっ……。いや、ありがとう」  暫くの間、瑠巳は思いやりの温情に浸っていた。 ーーだが、何か引っ掛かるものを感じる。 「絵里菜は何処だ?」  女子の列を順に見ていくが見当たらない。 「そういえば来てないなあ。点呼の時もいなかったな」 「んー。四時間目以降見かけてないよね」  片原が言った。
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