:迫り来る影

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 四時間目というキーワードに引っ掛かる。  四時間目、絵里菜に話かけられて中川にからかわれてーーまてよ。  ダッ!と駆け出す瑠巳。 「どこ行くんだよ」 「決まってるだろ、絵里菜の所だ!!」  大勢の人だかりの中を小柄な体で駆け抜ける。針を針穴へ通すかのようだ。  ーー此処、地下の避難所は災害時、大いに利用される。そのため生活設備能力は高い。大抵の生活が出来るほどの設備がなされてある。  年に数度災害は起きている。瑠巳はここへ幾度となく足を踏み入れている。  トイレに駆け込む。こんな事態であるため利用者がいないか心配だったが、奇跡的に誰もいなかった。  便器の棚をあがる。真上には空気孔があった。ガシガシと動かすと空気孔の網が外れた。  そこに指をかけ、よじ登る。スポーツが好きなのと体重が軽いおかげで軽々と懸垂できた。  空気孔は地上まで繋がっていて、途中までは平たい道だった。行き止まりになった。そこからは上へ進まなければならないようだ。  壁に手足をはりつけ、大の字になり、そのまま少しずつ手足をずらし壁を登っていく。  上の空気孔までは結構な距離があったが、なんとか着くことができた。足で体を支え、空気孔を外しにかかる。だが外れない。瑠巳は深呼吸したのち勢いよく持ち上げる。  ーーだが、開かない。くそ! どうすれば  瞬時、以前中川との剣道の練習を思い出す。 「瑠巳、力ってのは零距離からじゃあ働かないんだ」 「そんなこと知ってる」
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