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廊下を走る一行。十秒も経たないうちに白い魚人は教室の壁を破壊し追いかけてきた。
大型の巨体からは計り知れないほど、速かった。
数年前に設立されたばかりの新校舎はとにかく長かった。
「速すぎる。このままじゃ……」
追い付かれる。と言おうとした瑠巳の目前、廊下の角から片原が現れる。
その手には大きな弓と鋭い威圧を感じさせる矢が握られていた。射位をとりゆっくり右手を顔の横まで引く。
次の瞬間には瑠巳らの間を通り抜け、白い魚人の叫び声だけが聞こえた。その場で一行は振り返る。
片原の放った矢は白い魚人の巨大な眼球の中心に突き刺さっていた。
「弓道に関してはお前の前に出る者はいねえな」
中川は言った。
徐々に白い魚人は叫ぶのを止めた。そして目に刺さった矢を手でへし折り捨てた。
刺さったままの木片と矢じりは体内に吸収され、みるみるうちに傷口は塞がった。まるで粘土の様だった。
「人間技じゃない……」
片原の目には動揺が見られた。
小柄と言えど瑠巳は格闘技の経験者。今でも独学で格闘技を行っている。中川は武道家。剣道部に所属している。中体連(中学校体育連盟)では中学一年次から全国ベストスリーを維持している。片原は全国弓道大会中学生部門で全国一位の実力者。
ーーそんな人並み以上に優れた者の攻撃をまともに受け応えていない白い魚人を前に男三人は唖然たる面持ちを隠さずにはいられなかった。
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