:迫り来る影

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 瑠巳は中川に訊く。 「こわいか? 中川」 「こわいわけねえだろ、お前の方がこわいんじゃないか?」  二人とも表情は笑っていたが、体は嘘をつかない。汗が頬を伝う。 「行くぞ!」瑠巳が合図を出した時、白い魚人の後ろから複数の者が現る。白い魚人である。  行くぞと言ったものの足がすくんでその場から動けなかった。同じく中川も片原も絵里菜も驚愕としていた。 白い魚人は此方に向かって走りだした。瑠巳達は死を覚悟せざるをおえなかった。 だがその時 「焼き払え、炎星!(えんぼし」)  声が聞こえた方を見上げると家一軒を呑み込むであろう程の巨大な炎の球が降っていた。白い魚人は一人残らず呑み込まれた。  着地する音が聞こえ振り向いた。 「大丈夫かな、少年少女よ」  白銀の髪をした女性がそこにいた。軍服を着ていた。どこかブレザーに似ている。先程の炎が起こした熱風が白銀の髪をばらつかせた。  状況が読み込めず瑠巳らは応えることが出来なかった。 「本当はこの事実を知ってしまった君達の記憶を抹消しなければならない」  瑠巳の頬から汗が流れた。 「しかし、今此処で君達の記憶を消したら安全な所へ運んだりと大変なわけだーー」  「何よりも今は戦力が減ってはならないからな」と付け加えた。 「記憶は消さないでおこう。しかし他言無用だ。もしバラしたりでもしたら、命は無いと思え」  殺気が少年少女らの体を駆け走った。  瑠巳らは走りかけたが、一度礼をしてからドアに向かった。
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