:迫り来る影

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 緑樹が生え茂る山の中を少年は歩いている。朽腐した木の葉からなる柔らかな土が足跡を残し、山鳥の甲高くなだらかな鳴き声が耳を潤している。  しばらく歩いていると山道に出た。整備がされていない様子で地面に細かな亀裂が所々見当たる。  道中に立ち辺りを見渡す。木々の間から溢れる光が眩しく、思わず目が細くなる。  山頂の方に視線を移すと洞窟の様なものが見えた。少年は山道をまたいでまた森に入った。  山頂を目指しているため傾斜がきつくなる。道なき道は少年の踏みつける草々が避けられて、道になっていた。  山頂に着いた。少年は手で汗を拭い膝をつく。止まるまで汗が顎から滴り落ちる。一呼吸し息を調える。  目の前に洞窟がある。入り口はそれほど大きくはない。少年は恐る恐る中を覗く。  ーー真っ暗だ。しかし奥の方まで目を向けると光りがあった。ポケットから小型ライトを取りだし真っ白い光を暗闇の中に入れる。  先程の光りの位置を照らし出すとその真ん中に鉱石の様なものを見つけた。少年は急いで鉱石の元へ向かう。  大小転がっている岩を気にもせずにせっせと進む。鉱石の元に着いた。  光源は上に空いた穴から射し込む日の光であった。ゆっくりと鉱石を持ち上げライトで照らす。  エメラルドグリーンの綺麗な石だ。白濁している。手に持つと不思議な力を感じた。 「噂のパワーストーンってやつだ」
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