:迫り来る影

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 家を飛び出した後、通いなれた路地を駆使し、大急ぎで学校に向かった。  上靴に素早く履き替え階段をかけ上がる。教室の扉を勢いよく開けた。 「すみません遅れました」  スパン!と頭を叩かれる。上方を見上げると担任と目が合う。しかし担任は目を細めて微笑んだ。 「本郷瑠巳君、僕が点呼したら大きな声で返事をしてね。そしたら遅刻を見逃してあげるから」  瑠巳は顔が明るくなる。 「本郷瑠巳君」 「はーい!」  担任がアホか!と言うと共に生徒名簿で瑠巳の頭を叩く。  すると教室に笑いが起こった。何となく分かっていたが騙された事にムッとする。不愉快だ。  だが、窓際の中段の席に座っている女の子も可愛らしく笑っていた。長髪が細かに震動している。  それを見ると瑠巳は愉快になった。思わず口がほころぶ。 「何でお前まで笑ってんだよ」  思わぬ突っ込みに顔が赤くなる。 「なんか顔がアケーぞー!」 「うるせえ」  瑠巳は机に向かった。机は中央の一番後ろのようだ。座ると先生の話が始まった。というより続きであった。  瑠巳は机の側面にある金属のフックにバックを掛けると前を向いた。その時、左側の生徒が体を此方に傾け、小声で話しかけてきた。 「瑠巳、二日連チャンはやばいぜ」 「今日はちょっとあったんだよ」 「ちょっとって何だよ」 「中川には関係ないだろ」 ーーたいそうな怪我がいつの間にか治ってたなんて言えるかよ。信用性に欠けるだろうし……。
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