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フィルヴィアは、勝ち誇った顔でフ、と笑む。
「この町は、豆料理が美味しいそうです」
アレンは大きく息をはいて、脱力した。
自分はこの限りなくどうでもいいグルメ情報に、一体何を期待していたのか。
「確かに聞き込みしてる時にも市にいっぱい売ってたよな」
「アレン、食料は必需品でしょ。豆は保存食にもなるし。それに、情報を探してたのはヨウスケだけよ」
「……当たり前のように言うな……。……本命の情報を探せ、情報を」
もはや、怒る気さえ起きなかった。
本命の情報とは、兄のついてのことではない。
この世界には、魔物と呼ばれるものが出る。
神出鬼没の魔物達は、人間が行けないような異世界に住み、腹が減ればこちらの世界にやってくる。
そして、人間を喰う。
というのが有力な説だ。
魔物達がどういうモノであり、どこから生まれくるのかは実は詳しく解っていない。
もしかしたら異世界など存在せず同じ世界に群なして生きているのかもしれないし、人間の胎から産まれるのかもしれない。
しかし、この世界の征服者とも呼べる人間に害を為すことは確かだ。
依頼を受け、人間統治社会の不穏分子たる魔物を排除するのがアレン達である。
勇者、ハンター、様々な名前で呼ばれるが、土地それぞれに古来からの呼び名があるため、特にその職業の正式名称は決まっていない。
最も、アレン達が魔物を倒していくのは、あくまで兄の為だった。
直感的に、数年前家を襲ったのは人間ではなかったとアレンは感じている。
腕力、瞬発力、張力、体力、全て人間業とは到底思えなかった。
つまり、魔物を辿っていけば奴等に追い付けるのではないかという考えだ。
虱潰しな方法だが、今のアレン達にはこれしかない。
しかし、案外魔物というのは出てこないものである。
良いことなのか悪いことなのか。
しかし、並の人間では太刀打ちできない能力を持つ魔物にそう多く出没されていれば人間はとうの昔に滅びているだろう。
そう考えれば、出てきてもらわないで欲しい、というのが自然な考えかもしれない。
だがアレン達にとっては、今までフィルヴィアやイディアがどこからか稼いでくる金銭で生活が成り立っているから良いものの、魔物狩りで得た報奨金が少ないというのは考えものだ。
しかも兄についての手掛かりはなし。
旅に出てから数ヶ月、まだまだ先は長いということだろうか。
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