第1章 始

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「な……っ」 魔物は消えていた。 先程の場所に残されているのは、水と血の混ざり合う黒い水溜まりのみだ。 「……どこに……!」 ヨウスケは焦りに任せて、勢い良く振り返る。 視界の隅に捉える、乱れた髪、一文字に裂かれた、青白い肌に走る刀傷、狂い光る赤い眼、半開きの石榴のような口腔、振りかぶられた尾── ──そして、そのすぐ横に立つアレンの姿。 「っアレン!!!」 魔物の重い尾がアレンに届くというその時、 アレンは落ち着ききった表情で ゆっくりと、ある名前を口にした。
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