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「な……っ」
魔物は消えていた。
先程の場所に残されているのは、水と血の混ざり合う黒い水溜まりのみだ。
「……どこに……!」
ヨウスケは焦りに任せて、勢い良く振り返る。
視界の隅に捉える、乱れた髪、一文字に裂かれた、青白い肌に走る刀傷、狂い光る赤い眼、半開きの石榴のような口腔、振りかぶられた尾──
──そして、そのすぐ横に立つアレンの姿。
「っアレン!!!」
魔物の重い尾がアレンに届くというその時、
アレンは落ち着ききった表情で
ゆっくりと、ある名前を口にした。
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