第1章 始

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そのままアレンを背後に遣り、いつの間にか攻め寄っていた魔物の尾ひれを素手で掴む。 「……成る程。アレン、これを殺ればいいのか」 手に持ったものと現状を見定めるための空白を空けたのち、影は落ち着いた様子で背後のアレンに問うた。 アレンは、頷きがてら問い返す。 「今度は、喚ぶまでどこに行ってたんだ?」 長身の影は静かに首を傾ける。 「俺は只、お前に喚ばれたから来ただけだ」 魔物が身を捩って暴れる。 影は掴んでいた尾を離し、瞬時に首へと掴み直した。 魔物の青白い首筋に影の指がめり込み、開け放たれた口端から泡を含んだ唾液が滴り落ちる。 「……××…×…」 喘ぐように魔物が何かを発声し、眼球をぐるりと動かして影を睨んでいた。 魔物が睨む先、 緋色の炎の奥で、さらに鮮烈な一対の光が冷酷に煌めく。 「キア」 堅い声が影の常の名を呼ぶ。 影の腕に力がこもった。 「──……殺れ」 魔力が膨れ上がる。 緋色の炎は、天を焦がすかのように立ち上った。
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