20人が本棚に入れています
本棚に追加
そのままアレンを背後に遣り、いつの間にか攻め寄っていた魔物の尾ひれを素手で掴む。
「……成る程。アレン、これを殺ればいいのか」
手に持ったものと現状を見定めるための空白を空けたのち、影は落ち着いた様子で背後のアレンに問うた。
アレンは、頷きがてら問い返す。
「今度は、喚ぶまでどこに行ってたんだ?」
長身の影は静かに首を傾ける。
「俺は只、お前に喚ばれたから来ただけだ」
魔物が身を捩って暴れる。
影は掴んでいた尾を離し、瞬時に首へと掴み直した。
魔物の青白い首筋に影の指がめり込み、開け放たれた口端から泡を含んだ唾液が滴り落ちる。
「……××…×…」
喘ぐように魔物が何かを発声し、眼球をぐるりと動かして影を睨んでいた。
魔物が睨む先、
緋色の炎の奥で、さらに鮮烈な一対の光が冷酷に煌めく。
「キア」
堅い声が影の常の名を呼ぶ。
影の腕に力がこもった。
「──……殺れ」
魔力が膨れ上がる。
緋色の炎は、天を焦がすかのように立ち上った。
最初のコメントを投稿しよう!