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-6-
炎が急速に萎んでいく。
街が再び静寂を取り戻す。
アレンは炎が吸収されていく方へ目を向けた。
そこに屹立する長身の青年。
炎を具現化したような緋色の髪に、山端に沈む間際の太陽の色をした瞳。
ただ、端整な顔にも緋色の瞳にも感情と呼べるものは見当たらない。
ただ静かに、手に残った灰が風に拐われていくのを他人事のように見下ろしている。
完全な人型をした、アレンの従魔。
「あーあ、またアレンの独壇場で終わっちゃったよ」
殺し合いとも呼べる戦闘の直後とは思えない能天気な声が響いた。
ヨウスケは詰まらなそうに腕を頭の後ろに組んでぼやく。
夜桜が既に鞘に収まっているところで、自棄になっていることは明らかだ。
「俺じゃない、キアだ」
「俺はお前の命に従ったまでだ」
アレンが反論しようと口を開いた途端、キアに間髪入れず反論の反論を入れられた。
アレンは苦虫を噛み潰したような表情で必死に目を泳がせる。
「……それよりお前は加減することを知らないのか?絶対これ、近所起きたぞ」
アレンの言葉に真夜中だということを思い出し、仲間達の間に重い空気が流れた。
一人、当事者であるキアを除いては。
「……俺のせいだよな……。雑魚かと思って油断してた」
ヨウスケが俯いて悄気たように呟いた。
本気で反省しているらしく、声が沈んでいる。
キアがふと、アレンに目を落とした。
視線に気づいたアレンがキアに尋ねる。
「……え?あ…あー……」
そして話を聞いているかのように、黙ったままのキアに向かって頷く動作を数回続ける。
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