第2章 純

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小屋を一歩踏み出たアレンは、立ち止まって小屋を顧みる。 顔を上げて、屋根を見上げた。 夕暮れに赤く燃え上がる空に浮き出た、金属の鶏、その影。 風雨に晒され古び、雄々しさは欠片も見当たらずに傾きさえしているが、細かい部所まで繊細に造り上げられている物だ。恐らく、富豪の商人の家に飾りとして設置されているものと同等の。 造られた当初は、立派なものだったに違いない。 (……なぜ…) アレンは心の内で、静かに疑問を反芻する。 (盗みなど働く前に、あれを売ればいいものを……) 酸化した銅の板でさえ、この街では少しでも値がつくだろう。 加えてあの細工だ。磨けば壁の中でも売ることは出来るに違いない。 そこまでして手放せないアレは (……親の形見と考えるのが、妥当だろうな……) 生活を見る限り、幼い兄妹にもういないであろう、家族。 ──“親” 言葉が浮かんだ瞬間、様々な感情が胸の中で脈を打った。 一瞬逡巡して、アレンはそれを打ち払うように首を振った。
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