第2章 純

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-5- 翌日、アレンらは二組に分かれて行動することになった。 昨日の少年が一番の手掛かりなのだが、街は広い。 いつどこに他の手掛かりがあるかわからないため、とりあえず探索しておくに越したことはない。 それになにより、昨日あんな別れ方をしてしまったのだ。 四人は少年にどんな顔をして会えばいいのかわからなかった。 ただ、少年に会うことは魔物の噂を解決するには避けられないだろう。 街の散策は結局、会わなければならない少年との対面を引き延ばしにしたいがための口実に過ぎなかった。 アレンとヨウスケは南街区、イディアとフィルヴィアは北街区を探索する。 -北街区- フィルヴィアとイディアは昨日アレンが金銭を掏られた、基い、少年と出会った路上を歩いていた。 路上といっても、建物が少ないためにほぼ更地のようになってしまっているところがほとんどなのだが。 「……手掛かりになるようなものは、ないわね……」 「そうですね……。少し話を聞いてみましょうか」 フィルヴィアがそう言い、離れた場所に立つ青年のもとへ駆けていく。 それを眺めながら、イディアはもう一度辺りを見回した。 そうして辺りを気にしながら、マントの下からよく手入れされた拳銃を取り出す。 二丁の拳銃は、イディアの小さな手の中で重そうに鈍く光った。 彼女が無表情にそれを見下ろし、小さく息を吐いた その時。 「姉ちゃん」 イディアのマントが下方に引っ張られた。 イディアは一瞬息を呑み、目を丸くして下へ首を傾ける。 「……あなた……」 短く切った茶髪に大きな薄い黒の瞳。 間違いない。 昨日の少年だ。 イディアは焦ったように急いで拳銃をしまうと、取り繕うための笑顔を浮かべてみた。 「……ど、どうしたの?」 イディアが訊くと少年は助けを求めるように見上げてきた。 依然警戒しながらも、威嚇を解き始めた時の野生の動物にそっくりだ、とイディアはふと思う。 「……今の……、拳銃だよな?」 薄い黒の瞳は昨日の刺々しい視線と違い、怯えたように震えている。 「なあっ…」 少年はマントを強く握り、迷うように一度俯く。 しかししばらくして顔を上げると、悲痛な声を絞り出した。 「助けてくれ……っ!」
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