第2章 純

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-6- 「……それで俺達は再びここに来たと」 狭い部屋でアレンは不機嫌に呟く。 アレンの棘のある言葉を諌めるようにヨウスケが小突いてきた。 アレンは仕方なさそうに嘆息して、口を閉ざす。 うんざりだった。 先伸ばしにしようと街の散策をしたというのに、なぜこうも早くこんな展開になってしまったのか。 一方の少年は泣きそうな顔をして小さくなっている。 古びた椅子に腰かけて、膝の上で握りしめた拳は小刻みに震えていた。 「……兄ちゃん」 奥に横たわり、上半身だけ起こしている幼い少女が兄を呼ぶ。 澄んだ瞳は今は瞼の下だ。 ミラは、栗色の髪をふわりと揺らして首を傾げた。 「だれか、きているの?」 四人は目を見張った。 自分達は少女の目の届かない所には決していない。 瞼を開けば簡単に視界に捉えられるだろう。 疑問の渦巻く静寂の中、少年が口を開いた。 「……ミラは、産まれた時から目が見えない」 一同の視線が、一瞬ミラのもとへ集中した。 「……盲目……?」 アレンの問いに少年は俯き気味に頷く。 気まずげに伏せられた瞼の奥で、薄い黒の瞳が揺れていた。 その時、ミラが突然古びたベッドから飛び降りた。 そして壁を伝って、真っ直ぐとアレンに向かっていき、迷いなく、アレンに抱きつく。 腰元までしかない頭を見下ろして、アレンがピシリと固まった。 ヨウスケが小さく吹き出したのは気に入らなかったが、それどころではない。 引き剥がすことも出来ず、ミラも頑として離れない。 「お兄さん、おおきいのね」 ミラが顔を上げて微笑んだ。 寝たきりの病弱な少女だと思っていたが、その笑顔は強く、無邪気なものだった。 直後、アレンの右後方に慣れしたしんだ魔力が降り立った。 抑制された魔力は何の力も持たない人間には感じとれない。 感じとれないはずなのだが。 ミラの大きな瞳がアレンの右後方に向けられた。 そして少女は 「お兄さん、そのひとだあれ?」 無垢な瞳で、問いかけた。
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