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「……大丈夫か」
ミラの頭に手を乗せて、アレンは小さく呟いた。
ミラはぎくしゃくとした様子で頷く。
「……なぜ、キアが見える」
刺激しないよう、抑揚の乏しい声音でアレンは訊く。
無表情ではあったが、珍しく冷たい響きは含まれていなかった。
しかしそれは、少女を落ち着かせると同時に自らの動揺を必死に抑えているようにも聞こえた。
なぜ、従魔を持つ仲間達にも見えないキアが、この子に。
その問いに答えたのは少女ではなかった。
「……それが、ミラの罪だ」
少年が痛みを堪えるように呟く。
ミラも、戸惑うように声の方を見る。
「……罪……?」
俯いた茶色の髪が揺れる。
少年が頷いた為だ。
「……おれの名前はヤク。
ミラは妹で……、産まれた時から目が見えない。
父さんは昔に家を出てって、体が弱かった母さんはすぐ死んじゃった。
それから、ずっと二人で生きてきた。
でも、どうしようもなかったんだ。
ミラも体は弱いし、おれもまだガキだから、ろくに働くこともできない。
でも、いつだったか、なにがあったかあんま覚えてないけど…
すごく暗いとこ、『死ぬのかな』って考えてた時だったと思う。
おれ達の所に、天使が舞い降りたんだ」
「……天、使……」
瞠目するアレン達に、ヤクは今度は力強く頷いた。
輝きの灯った瞳に、遠い過去が映し出されていた。
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