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「……レン…アレン」
だんだんと明確に聞こえてきた友人の声でアレンは瞼を開けた。その瞼の下から、透き通ったエメラルドの瞳が現れる。
アレンは首を億劫そうに持ち上げ、重い息を吐く。
その様子を見て、声の主である友人はアレンの顔を覗きこむようにして尋ねた。
「どうした?……もしかして、起こしちゃ悪かったか?」
恋人でもつくった夢でも見てたのかよ、とふざける友人に、アレンは黙れと一言だけ返す。
そして、眉を寄せて不貞腐れた様にぼそりと呟いた。
「思い出したくもない。……いつもの夢だ」
「あ、そう?」
「……で、お前はまた何してるんだ、ヨウスケ」
アレンは白白しい目で友人──ヨウスケ・ミナツカを見る。
ヨウスケは、黒い髪を揺らして首を傾げた。
「何って、飯食ってるけど」
「っ飯だと!?お前なんで起こさないんだ!!?」
アレンは椅子をガタンと鳴らして立ち上がった。太陽の光を集めたような金の髪がつられて揺れる。
「いや起こしたじゃん。それにイディアが黙っとけって」
「イディアお前なんてことを。放置しとくとヨウスケに全て食われるじゃないか……」
アレンは世界の終わりだとでも言うような剣幕で、窓際に座りティーセットを広げている少女を睨んだ。
「あら、だって食べ物の匂いを嗅ぎ付けて、のこのこ起きてくると思ったんだもの」
そんなアレンを少女──イディア・アズベラは、ティーカップに口を付けてから華麗に返した。
小鳥の囀りのような声に似合わず、さらりと毒を吐く。
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