第1章 始

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-2- 「……レン…アレン」 だんだんと明確に聞こえてきた友人の声でアレンは瞼を開けた。その瞼の下から、透き通ったエメラルドの瞳が現れる。 アレンは首を億劫そうに持ち上げ、重い息を吐く。 その様子を見て、声の主である友人はアレンの顔を覗きこむようにして尋ねた。 「どうした?……もしかして、起こしちゃ悪かったか?」 恋人でもつくった夢でも見てたのかよ、とふざける友人に、アレンは黙れと一言だけ返す。 そして、眉を寄せて不貞腐れた様にぼそりと呟いた。 「思い出したくもない。……いつもの夢だ」 「あ、そう?」 「……で、お前はまた何してるんだ、ヨウスケ」 アレンは白白しい目で友人──ヨウスケ・ミナツカを見る。 ヨウスケは、黒い髪を揺らして首を傾げた。 「何って、飯食ってるけど」 「っ飯だと!?お前なんで起こさないんだ!!?」 アレンは椅子をガタンと鳴らして立ち上がった。太陽の光を集めたような金の髪がつられて揺れる。 「いや起こしたじゃん。それにイディアが黙っとけって」 「イディアお前なんてことを。放置しとくとヨウスケに全て食われるじゃないか……」 アレンは世界の終わりだとでも言うような剣幕で、窓際に座りティーセットを広げている少女を睨んだ。 「あら、だって食べ物の匂いを嗅ぎ付けて、のこのこ起きてくると思ったんだもの」 そんなアレンを少女──イディア・アズベラは、ティーカップに口を付けてから華麗に返した。 小鳥の囀りのような声に似合わず、さらりと毒を吐く。
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