20人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺が寝る前はまだ午前だったな」
アレンは窓から外を覗き込んでみた。
うたた寝をする前にはほぼ真上にあった太陽は、今は当然という顔で西の空に居座っている。
「イディアのティータイムが始まっているということは」
アレンはそのままイディアに目を移す。
「今は三時か……」
まだ寝ぼけた頭のまま、アレンは呟いた。
「……お前ら何してたんだ?」
「勿論、散策に決まってんだろ」
「まだこの町に来て三日ですしね」
「睡魔に負けた役立たずのアレンと違って調べてきたのよ」
見せつけるような連携で事情と皮肉を吐いた後、とどめと言わんばかりに三人は声を揃えてこう言った。
「役立たずのアレンと違って」
「……悪かったよ。役立たずで……」
アレンは居心地が悪そうに三人から目を逸らす。大したことのない皮肉も、声を揃えて言われると結構胸に刺さるものがある。
アレンの反応が面白いのか、三人は近所の悪ガキ同然に目と口を三日月にして笑いだした。
三人で寄り集まり、まるで内緒話をするように口に手を添えてこちらをチラチラ覗き見してくるところなんかが非常に腹立たしい。
「本当、アレンって、そーゆートコ子供だよね」
「黙っていれば只の美少年なのに残念よねぇ」
「あ、じゃあ口でも塞いでおきますか?」
「……おい、お前らいい加減にしろよ……」
アレンは金の髪を揺らしてうなだれた。
肩が震え、引きつった口端が痙攣する。
「アレンって寝起き悪いよね」
「アレンこわーいっ。モテないわよ」
「アレンさん、短気は損気ですよ」
こうなるとキリがない。
三対一とか絶対無理。
そう思うことですぐに区切りをつけることを、アレンはこの数年間で学んだ。
「で、お前ら、なんか収穫はあったんだろうな。三時間探して、まさか収穫ナシとか言わねぇよな」
「はいはーい!」
ヨウスケが元気よく手を上げた。
先ほどの茶番劇は日常茶飯事のため、話題が切り替われば何事もなかったかのように雰囲気も切り替わる。
「そのまさかでーす!」
「よし、覚悟はいいか」
「うわ、スゲー殺気……」
「アレンさん、落ち着いてください。それについての情報は得られませんでしたが、とても重要な情報を手に入れましたから」
「は?重要な情報?」
珍しく頼もしげな発言をするフィルヴィアに、アレンは困惑を隠そうともせずに聞き返した。
最初のコメントを投稿しよう!