一章 なんて暖かな君のぬくもり

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 町の外に出る門に向かって、再び歩きはじめる。  石畳の道を歩く、少女の小さな頭を見下ろしながら、クライヴは痛みをこらえるように顔をしかめた。  いつも、こうだ。  自分のせいで、クライヴはこの少女に、我慢ばかりさせている。  クライヴのせいで、レインはどこかに腰を落ち着けることができないし、友達をつくることもできない。太陽の光さえ、クライヴはレインから奪ってしまった。  不自由な己の身を、心底呪わしく思う。  いっそ、ここで彼女を解放してやるべきなのかもしれない。  そう思った時、ふいに、レインがクライヴの腕をつかむ手に、力をこめた。 「お人形より、クライヴのがいい」  ぽつりと一言、つぶやく。  見上げた少女の顔は微笑んでいて、腕から伝わるぬくもりが、彼女の存在を主張してくる。  クライヴは目を閉じた。 「……そうか」  うなずいて。  夜の闇に紛れて、この町から離れるために、外門を目指した。
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