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静まり返ったタクシーの中、パリの夜景が綺羅星のごとく流れて見える。
アムスタッドは左手で抱え込むようにリリコを抱き、右手は自分の太ももの上でリリコの小さな右手を撫でていた。
話すべきことは尽きなかったが、今は口を開くと別のことをしてしまいそうだった。
タクシーは格式あるホテルで二人を降ろした。
案内をつけないまま、アムスタッドはリリコを部屋へ導く。
「……君の家に行ってみたかったが」
セキュリティの関係上、リリコの家に泊まることはできない。
「来てほしかったわ。アトリエを兼ねていて、とても気に入っているの。ジュリアと住んでいるのよ」
「それなら、なおさら行けなかったな」
「どうして?」
深い絨毯にピンヒールを取られそうなリリコの肩を包んだまま歩く。
ようやく部屋までたどり着いてリリコを中へ促すと、彼女が振り向く前に腕の中に閉じ込めた。
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