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元はと言えば、マカダムには来るつもりではなかった。
リリコは留学先のロンドンから、マカダムの隣国である、クラグ共和国に1週間の予定で滞在していた。
クラグは貿易で栄えた先進都市をもつ、産油国。
観光をするにも、資料集めのショッピングをするにも苦労することは一つもなかった。
すでに、日本を離れてロンドンで一人暮らしをしているという自負もあったかもしれない。
それで、つい…
「油断したかも」
無意識にまた溜息をついてしまうと、熱気が喉を駆け廻り、懲りずに再度コホコホと咳き込んだ。
手元の地図を何度見直しても目的地には着きそうになかったが、他に頼るものもなくて地図を睨みつける。
今まで眩しい日差しの中を歩いてきたから、目がチカチカして、地図が暗く見える。
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