Second Visit

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アムスタッドは力強く頷くと、リリコを思い切り抱き締めた。 その言葉は真実だけれど、きっと違うのだとお互いが知っていた。 ……だからこうして抱き合うのだ。 リリコは押し付けられるまま、厚い胸板に頬を寄せる。 きゅっと丸くなったリリコの肩を、大きな掌が滑った。 見上げると出会った日と同じ、真摯な褐色の瞳と視線が絡まる。 そっとアムスタッドが手を離した。 急に体温を失くした体は肌寒く、ふるっと体を震わせた。 狭いバルコニーで欄干を背に預け、何とかリリコと向き合ったアムスタッドは、ふわりと微笑んだ。 そっと伸ばされた指先同士が、地面で触れ合う。 今までぴたりと寄り添っていたのが嘘のように、触れた爪先から甘く痺れ、熱が上がって行く。
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