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彼の手を、思い出していた。
こんなこと、思いもしなかった……。
一度ならず二度も会えて、同じ時を過ごしたのに。
これからの、約束までくれたというのに。
これほどまでに……狂おしいなんて。
意識を逸らそうとしても、頬に肩に髪に、唇に耳に首筋に、彼の手が、彼の吐息がまとわりついて離れない。
全身が、体の中まで心まで、彼を欲して、今すぐ彼をと渇望する。
どこまで彼を求めれば気が済むのだろう……。
一度は離れる決意をした5年前の自分は、他人のようだ。
いや、別人になってしまったのだ。
彼と再会して、私は新たな生を受けたとしか思えない。
身も心も作り変えられてしまったのだ。
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