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「リリコ……」
返事を待たずに傍へ歩を進めると、リリコは肩を揺らして振り向いた。
案の定、まるで気がついていなかったらしい。
黙って頬に手をやると、ピクリと反応はしたものの、じっとされるがまま立っていた。
「また、こんな……」
「え……?」
濡れるクロードの掌に、ようやく自分の涙に気づき、慌てて頬を拭った。
こんなだから……。
自分でも分からぬほどの物思いに沈み、頬を濡らすから。
そして、無防備にもそれを己に拭わせなどするから。
……また、自分はやり切れぬ思いで引きち切れそうになる。
何もかも、君でさえ壊してしまいたくなるというのに。
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