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今にも溢れ出そうな想いを胸に抱え、クロードが顔を上げると、リリコが気恥ずかしそうに微笑んだ。
「ごめんなさい。心配かけて……」
その健気な微笑みに、ささくれだった気が削がれていく。
「大丈夫だから……ちょっと煮詰まっただけだから……」
その涙は決して仕事にあるはずもないのに、必死でクロードの気を逸らそうとする。
クロードにも誰にも、奴を悪く言われたくないのだ。
そんなリリコの心情が分かるから、クロードはそっとリリコを抱き締めた。
責めることで、リリコの気が変わるなら、いくらだって奴を罵倒する。
何なら殺したっていいくらいだ。
でも、きっと彼女の心はもう変わらない。
そう知ってしまっているから、せめて取り繕った笑顔はさせたくないと、彼女の顔を自分の胸に押し付けた。
……そう、これは親愛のハグだ。
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