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「……もう切る」
「待ってッ!!」
リリコが叫ぶのが聞こえたが、アムスタッドは構わずネットワークを切り、部屋を飛び出した。
「……どこに行かれるおつもりです」
後宮から出た途端に、ラムノスが立ち塞がった。
常にはない動きをしたアムスタッドに気づいた誰かが知らせたに違いない。
「行かせてくれ」
足早にすり抜けようにも、どれだけ睨みつけようにも纏わりついて来る。
「どうやって行かれるおつもりです。冷静におなりなさい」
言われるまでもなく、分かっていた。
王でなくなったとはいえ、大統領の自分が今すぐ国外に出る術はない。
「すべて投げ出すおつもりですか? それがリリコ様のためになるとでも?」
「…………ハッ」
リリコの名前まで出されては敵わない。
ようやく足を止め、俯く。
鋭いラムノスの視線に晒されながら、為すすべもなく、後宮に戻るしかなかった。
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