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子供のように泣きじゃくるリリコをクロードが見下ろす。
「……逃げ出すつもりか。君の夢から」
際限なく続くリリコの嗚咽が、一瞬間を見せた。
「ようやく……本当にようやく、だ。現実のものとなってきているのに、本当にそれでいいのか」
リリコの震える肩が止まった。
「それでもいいなら好きにしたらいい。ただし、その時はもう、俺は知らない」
リリコはゆっくりと両手をその顔から外し、クロードを見上げた。
……違う。
そうじゃない。
私が、あの人が……そう、“私達”が求めていた未来は、そうじゃない。
リリコはじっとクロードを見詰め、首を横に振った。
「だったら、今すぐ顔を洗え。今日のミーティングがどれだけ大切なものかは君もよく知っているだろう」
リリコは涙のせいで痛む頭をどうにか持ち上げ、立ち上がった。
「あと10分で何とかしろ」
クロードの言葉がどれだけ冷酷でも構わなかった。
お陰でほんの少しなのかもしれないが、冷静さを取り戻した。
どれだけ辛辣に当たろうが、クロードの瞳の奥にある労りの情は消えていない。
それに感謝してリリコはどうにか足を動かし、言われた通りにバスルームに向かったのだった。
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