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翌日、些かの冷静さを取り戻したリリコは、クロードに呼ばれてパソコンの前に座った。
画面の中には懐かしい男の姿……。
しかし、画面を通じては滅多に見ないラムノスであった。
リリコが画面の前に腰を下ろすと、ラムノスはそっと目を伏せた。
「リリコさん、あなたには感謝しています」
「……なぜ?」
訝しさを隠しもせず、リリコは首を傾げた。
彼にとっては、敬愛する主人の人生に割り込んだ厄介な女に過ぎないはずだ。
嫌われているとは思っていないが、感謝されるようなことはしていない。
マーラのドレスもまだ制作中……いや、ショーで使ったものが欲しいと言われたから大したこともできずにいる。
その上、昨夜は喧嘩もしてしまった。
もしかしたら、アムスタッドの気が荒れて、ラムノスに迷惑を掛けたのかもしれない。
自分が仕事を捨てて彼の傍へさっさと行っていれば、あのような諍いはなかったのではないかと思わずにはいられなかった。
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