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ラムノスはそっと顔を上げると、静かに話し始めた。
「閣下の政務、そしてあなたに通ずる献身……それからあなたのドレスが私に踏み出す勇気をくださいました。あなたの仕事が私の力になったのです」
「……どういうこと?」
思ってもみない告白に、リリコは目を見開いた。
それには答えず、ラムノスは話し続ける。
「どうか、もしあなたが望むのであれば、これからもデザインを続けてください。
あなたにしか作れないものが、あなたにしかできない、あなたにしか見えない世界があるのですから」
見開いた大きな黒いリリコの瞳から透明な雫がこぼれ落ちた。
まさか……まさか彼に仕事の後押しをされるなんて、これっぽっちも思っていなかった。
「本当に? いいの?」
大統領夫人として、元国王夫人として、成さなければならない役目は、デザイナーと両立できるのだろうか。
必ずできると、そうしたいと強く思っているからこそ、そして彼を、彼の国を愛しているからこそ、苦しんでいた。
でも、彼を一番傍で支えるラムノスが賛同してくれるなんて。
ぼやける視界の中でラムノスは静かに、しかし力強く頷いた。
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