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あの恐ろしい日、立ち尽くすしかなかった私を、あなたは後宮に引き連れ、私たちしか知らない隠し扉に押し込めた。
私だけを残し、惨劇の場に戻ろうとするあなたの裾を必死で掴む。
「いやっ!! ラムノスお願いっ、一緒に逃げて!!」
「殿下、離して下さい!!」
「やだっ!!」
「行きなさいっ!!」
「ヒッ……!!」
恐ろしい力で腕を捻り上げられた。
しかし、次の瞬間には、これまで決して声を荒らげたことのなかったラムノスの必死の形相に悲鳴も引っ込んだ。
……ああ、この人は死にに行こうとしているのだ……
それが、分かってしまった。
「……私も行く」
「何言って……」
「私も行くわ。みんな私を探してるんでしょう? 私が死ねば満足なのよ」
「なんてことをっ!!」
「痛っ……」
乾いた音が鳴り響いて、私は呆然と頬を押さえた。
あなたは血走った瞳で食い入るように私を見下ろした。
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