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お願い、生きていて……
その願いだけをお互い抱きながら過ごしたその一晩のことは、例え記憶がなくなったとしても忘れられそうにない。
あなたは違うの?
私は、あの恐怖の一夜に思い知らされた。
物心つく前から、いや、産まれる前から傍にいたというこの男の存在が、自分の世界で最大にして唯一であることを。
「何か言いなさいよ」
たまらなくなって私が掴んだシャツをじっと見詰めた後、私のその手を握り締めて、ようやくあなたは顔を上げた。
「……熱烈な告白ですね」
「あっ」
してやられたと思ったけど遅かった。
そのまま手を引かれ、私はあなたの平かな胸元に収まった。
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