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それは初め、何ら注目を集めるものではなかった。
極東の島国出身の小娘――としか評されなかったリリコは、パリでコレクションの発表を何度かはした。
快挙といえば快挙だが、ただそれだけとも言える。
業界内で一定の評価は得られているが、これまでのマスコミ掲載は、雑誌やネットニュースの片隅。
いずれも業界誌で、一般での知名度は皆無だった。
アムスタッドだって似たようなものだ。
確かに彼は国王だった。
そして、現在は大統領である。
マカダム共和国の国民で彼を知らぬ者はいない。
しかし、国外での知名度は、ほとんどない。
知っているのは近隣国か、あるいは王族として交流のあった貴族社会か。
いずれにせよ、日本、あるいは欧米で彼を知るものは、ごく一部に限られていた。
経済は堅調に推移しており、国内情勢は安定しているが、未だ世界的に見て豊かな国ではないのだ。
関心は、そう高くない。
それが一変した。
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