1.放課後時計

5/9
前へ
/270ページ
次へ
「そんな訳ないよ。付き合ってない」 「だって、今。どうして」 瞳ちゃんが、目で慧の方を示す。 「先生に言われて、アンケート集計してただけだよ」 席が隣同士の私たちが指名されたというだけだ。 「なーんだ、そうなの」 愉快そうに笑って、瞳ちゃんが立ち上がる。 「二人きりでいるから、びっくりしちゃった。…あ、忘れ物取りに来たんだった」 といって、前の席の机からペンケースを取り出し 「じゃーね、慧」 手を振って、教室を出ていく。 なんだったんだ…… 慧をみると、苦虫を噛み潰したような顔で、坊主頭をがしがしと掻いている。 私たちの話、聞こえたんだろうな 。
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

194人が本棚に入れています
本棚に追加