503人が本棚に入れています
本棚に追加
ずっと切っていないから伸びてきた黒髪が風に揺らされて靡く。
手紙を転送し終えたオレは、風に当たりたくて屋根の上で寝そべっていた。
空は赤ともオレンジとも…少し紫もかかっているような…そんな幻想的な夕焼け空。白かった雲がそんな夕焼けの色に染まりながら空を走っている。
ずっと見ていたいな…
里の生活は静かな、それでいて暖かい音を奏でているのが余計に心に何かが染み渡る。
しばらくそうして黄昏ていると
ブォン!ブォン!…
誰かが素振りをしているような音が聞こえてきた。そっと起き上がり顔を向けてみると、そこにはガルサゴが一人で両手の斧を振り回していた。
その動きは速く、一切の無駄がない。それでいて力強く全てが一撃必殺の威力がありそうだ。
あのときとは動きが全然違う…
その一つ一つに迷いを一切感じない。
きっと、あのとき……オレと決闘をしたとき。
人に言えぬ迷いがあったのだろうな…自分に誇りを背負わせることによって自分を自分としてではなく、里長として振る舞ったのだろう。里長としてオレと戦ったんだろう。
そして、ガルサゴは本当はオレにそんな里長を倒して欲しかったのかもしれないな…
なーんて、これはただの推測でオレにははっきりとは分からないな。
自嘲気味に鼻で笑うとスクッと立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!