序章

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   白いワンピースを着た一人の少女が、丘の上に立っていた。  少し青みがかった黒い長髪を風に流しながら、白い帽子を風に飛ばされないよう押さえて空を眺めている。  そこに一陣の風が吹く。 「んっ!」  少女は帽子を慌てて押さえるが、間に合わず帽子は風に飛ばされていく。 「あっ!」  少女は慌てて手を伸ばすが、帽子は高く舞い上がって行く。 「あ……」  お気に入りの帽子だったのか、少女は飛ぶ帽子を悲しげな表情で見つめる。  その時。 「よっと!」  どこからともなく少年が現れて飛び上がり、帽子をキャッチした。  少女とそう歳の変わらない位だろうか。その少年は帽子と同じよう、風に乗っているかのように高く飛んでいた。 「はい、帽子。すみませんでした! ちょっと急いでるんで!」  少年はそうとだけ言い残して、帽子を少女に渡すと走り去って行く。 「あっ! あ……」  少女が声を掛ける間もなく、少年の姿は消えてしまっていた……。    
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