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雅は突然先生に授業であてられた小学生の様な表情になって、念のため眉をしかめて考えてから答えた。
「五千円で十本、いや十株だから、五万円か?」
ママさんはにやりと笑って先を続ける。
「正解だ。あたしは最初に竜から借りた株を売って十万円持ってる。買い戻しにかかる金は五万円。あたしの手元には差し引きいくら残る?」
ママさんは今度は他の三人全員の顔を等分に見回した。沙紀はすぐにうなずき、雅と竜も戸惑いながらうなずく。
「五万円?」
竜が自信なさげに言った。ママさんは大きくうなずいた。
「そう。あんたから株を借りて、そいつが大きく値下がりしたところを狙って買い戻す。これであたしは濡れ手で粟の、五万円の儲け。こういうやり方を空売りと呼ぶのさ。そしてその会社の株の値下がりってのが、あたしが裏で仕組んだ事だったら?」
雅と竜が同時に「アッツ」と声を上げた。沙紀はまたどこかのサイトに接続を始めた。雅がママさんに言う。
「するってえと何か? どこかの組がその空売りで儲けるためにドン・ロシナンテの店を次々に襲わせてたって事か?」
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