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その裏通りに「ハーブ店」だとか「ハーブの店」だとかいう看板を掲げた店が数件できてから、一層辺りの雰囲気が悪くなっていた。
それらの店は申し合わせたように雑居ビルの地下にあり、看板には下手くそな手書きの字で「合法ハーブ」だの「バスソルトです。吸引しないで下さい」などと小さく書いてある。
今では昼間から挙動不審な若者がうろつき、学生たちは陰でその一帯を「裏渋谷」と呼ぶようにまでなっていた。
手巻き煙草のようにして煙を吸引するための、何かの植物の葉っぱらしかった。明らかにそういう目的で売っているのに「吸引しないで下さい」と表示しておけば責任逃れができるという算段なのだろう。
加奈が沙紀の腕をつかんでいる手にぐっと力を込めた。そして怯えきった口ぶりで言う。
「ねえ、この辺じゃなかった? 例の自殺した女子高生が襲われたのって?」
「あれはもっと奥に入った所だから、大丈夫だとは思うけど」
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