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沙紀はママさんの顔を見て、頭を前に振った。
「やっぱりそう思います?」
「ちょっと待って下さいよ。カラウリって何すか?」
たまりかねて竜が横から口をはさんだ。竜が雅の方に視線を向けると雅はあわてて首を横に振った。
「お、俺にわかるわけねえだろ」
ママさんが苦笑しながら説明を始めた。
「いいかい、普通会社の株ってのは値上がりして儲けがナンボだろ? けどね、値下がりした時に儲ける相場の張り方ってのもあるのさ。たとえば……」
ママさんは店のテーブルの上に割り箸を十本置いた。
「これが株式だとするよ。竜、あんたが十株持っていて今、一株一万円だとする。あんたは今、いくら分の株式を持ってる事になる?」
竜はそれぐらいの計算は出来ますよ、とでも言いたげな表情で答えた。
「十万円ですよね?」
ママさんが続ける。
「そう。で、その株券を……」
そう言ってママさんは竜の前の割り箸十本を自分の手もとに引き寄せた。
「あたしが一時あんたから借りる。そして一旦、市場で売りに出す。そうすっと、あたしはとりあえず十万円の現金が手に入る。けど、この株券はあんたに返さなきゃならない。さてこの会社に何かまずい事が起きて、株価が急に下がったとする。一株一万円だったのが、半年で五千円まで下がったとしよう。あたしは竜に株券を返すために、十株買い戻さなきゃならない。それにはいくらかかる? ほい、雅」
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