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「貴様らの誰か一人と姫を交換だ」
賢竜、石板、聖剣。
その全てをクリアして扉の鍵を手にし、息巻いて魔王の前に辿り着くなり、彼、魔王はそう言った。
「そうだ。命の保証もしてやろう。
おぉ。私はなんと寛大なんだ」
元々は王女奪還が旅の目的だった彼らにとっては渡りに船だった。
出迎えの言葉一つもなく、いきなり交渉から入る台詞に出鼻を挫かれた彼らは
「ッざけ…」
頭に血が上る時間さえ与えられず、
「わかった。
俺が行こう」
まず、一行の代表とも言うべき勇者が前へ、進み出た。
「お前!」
うろたえる仲間を後目に
「その代わりこれ以上同じことをするなよ」
「約束しよう」
口元に笑みを湛えた魔王の言葉はとても、信用の足るものとは思えなかった。
「聖剣はそこに置いておく。
折るなり焼くなり好きにするといい」
手にした聖剣を、魔王から少し離れた場所に突き刺して、勇者は言った。
「聖剣か。
ならそれはできないな。
私には触れることもできない」
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