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「呆れた。
それで放って帰ってきたワケ?」
「いいわよ。
私が救い出してくるから」
「くれぐれも姫にこのことは話すな」と勇者は最後に締めくくっていた。
道中、決められた作戦はこうだった。
「ヤツは必ず俺たちの弱点をついてくる」
そう。この世界の殆どは魔力、言ってしまえば魔族たちの生命力を源として生きている。
本来ならお互いの均衡を保つ方が先なのだが、彼らには共にあろうとする気がまるでなかった。
自分たちの私利私欲に走るあまり、やりすぎてしまうものがしばしばあった。
相手はそんな者たちの長だ。
まともな手で返してもらえるはずはない。と彼は考えた。
では闘うという選択肢はなかったのか?
と問われれば、彼はこう答える。
「血を流すばかりが闘いじゃない」と。
ここまでで十分血は流れたと、彼は考えた。
あくまでも交渉という形にこだわった彼は、自らの身柄と姫を交換という選択肢を選んだ。
そして結果、見事読み通りの展開へ持ち込めた。
しかし、最後まで納得のいかなかった仲間に彼は「姫を守ってやってほしい」と遺していた。
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