エピローグ

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____ 彼の日常は暗黒だった。 一切の音も聴こえず、呼吸や心臓の鼓動すら感じることが出来ない。 今自分の身体がどういう状態になっているのかもわからない。 寝ているのか立っているのか、感じないのだ。 彼は五感の全てを剥奪され、地下牢にもう十年も吊るされている。 彼の罪は殺人。それも何十人もの人々を虐殺したのだ。 駆け付けた兵士の部隊が目撃したのは、血の海の中で立ち尽くす彼の姿。 もちろん、初めは誰も彼がこの惨劇を引き起こしたなど思ってもいなかった。 彼のことを保護しようとして近付いた兵士の首が血を噴き出し、頭が地面でゴロリと転がるまでは…… 「術式を解除しろ」 「ハッ!」 そういうことがあったから、おそらく一生解放されることはないだろうと、彼も含め彼の存在を知る者は全てそう思っていた。 しかし、状況が変わったのだ。彼を、この史上最悪の虐殺者を封印から解き放たなければならなくなってしまった。 選択を迫られた国王の苦渋の選択の末のことである。 誰も止められやしない。 王もまた、この虐殺者に娘を殺された被害者の一人なのだから。
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