第一夜【渡り】

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早起きの男の子は今日も神社を訪れていた。 あれから何年も経ち、男の子は当然成長して電車で二時間掛かる高校に通っている。 今時のファッション、今時のヘアスタイル。仕方ないことなのかもしれないが、幼い頃の優しい男の子ではなくなってしまったいた。 「あー……めんどくさい。何でオレがこんなもん掃除しないといけないんだよ。おばあちゃんの遺言とかんなもん知ったこっちゃねぇって」 そして、男の子がここを訪れるのも以前のように毎日早朝というわけではなくなってしまう。 幼稚園の最後の夏休みに祖母が他界し、男の子は一年ほど神社に行かなかった。 祖母を思い出してしまう場所に立ち入りたくなかったからだ。 小学生になって、おばあちゃんの最後のお願いだからと母親に言われるまではその近くを通ることすらなかったが、大好きな祖母のためにと頑張って夕方に掃除に行くようになった。 しかし、中学生にもなると訪れる回数が少なくなっていき、そして、高校生になってからは、つまりは去年のことだが、去年は一回夏休みに母親に言われて嫌々掃除だけしに行っただけの状態だ。 今年に至っては、掃除を始めるかどうかも怪しい。
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